クリニック

來村昌紀さん著「がんばらない小さなクリニックの経営戦略」から学ぶ

奥様とふたりでクリニック経営をされている、脳神経外科医・來村さんの著書「がんばらない小さなクリニックの経営戦略」を読みました。

来年ひとり税理士として独立予定なのですが、経営者という視点、顧問先としてクリニックをみる、という2点において参考になり、とても興味深く読むことができました。

80%のちからで働く

來村さんは、先輩医師の教えにより「80%のちからで働く」ことを心がけているそうです。

といっても、決して「20%分手を抜く」ということではありません。

80%のちからで仕事をして、残り20%で勉強したりいい生活をする、という考え方です。

この考え方に大賛成です。

どの業界でもそうでしょうが、特に医業や士業は日々の勉強が欠かせません。

医療は日々進化していますし、税制は毎年変わります。

資格を取ったら終わりではなく、常に勉強し知識を増やし、変化に対応していく必要があります。

來村さんは80%ー20%としていますが、個人的には70%ー30%くらいでもいいかと。
(ひとり税理士の諸先輩方を見ていると、60%ー40%?50%ー50%?とも思えますが。)

スタッフの幸せ→より良いサービス→患者さんの満足

今はご夫婦だけでクリニック経営をされていますが、以前は、受付事務2人、看護師1人、看護助手1人がいたそうです。

当時の來村さんは、治療に専念して面倒くさいことはやりたくない、という姿勢だったようで、マネジメントするという意識はなかったとのこと。

そのせいか、いろいろと事件が起こり、ひとりやめふたりやめ、最終的には奥様とふたりだけになったそうです。

ご自身でもおっしゃっていますが、雇うときに人を見極める目がなかったこと、雇った後やめさせることができなかったこと、やめなくても済むような職場環境を整えてあげることができなかったこと、結局、すべてご自身の責任だと認識していらっしゃいます。

もしかしたら謙遜してそうおっしゃっているのかもしれませんが、事実、そうだと思います。

人を雇うのであれば、やはり、覚悟が必要です。人の人生を背負うのですから。
(偉そうに書いていますが、わたしには今その覚悟がないので、「ひとり」を選択する予定です。)

ご自身の反省も踏まえて、現在は下記の循環を目指しているそうです。

まずは自分たちがご機嫌で働けるシステムを作る

それを見てじぶんたちのミッション・ビジョンに共感し、一緒に働きたいと思う人が出てくる

來村さんは、決して人を雇うことをやめたわけではなく、考え方を変えたのです。

具体的には、

スタッフの幸せ

より良いサービス

患者さんの満足

です。

先日読んだ「なぜ幸福度世界一の北欧型福祉モデルが人生を豊かにするのか?安定した収益を得ながら、みんなが幸せになる方法」の著者、野田 直裕さんの考え方と同じです。

野田さんは、

「スタッフが疲弊しない→効率的に仕事ができる→離職率が低い→求人に余分なお金や手間がかからない→利益がちゃんと残る→短時間労働・高賃金」

というサイクルが実現できています。

來村さんも目指すところは同じでしょう。

わたしは、スタッフの犠牲の元に成り立つビジネスなどすべきではないと思っています。

スタッフの道徳心、向上心を利用して成り立つビジネスなどそもそもやるべきではないし、どうしてもやりたいことであれば人を雇わない選択をすべき、と思っています。

來村さんのお考えが実現されること願っています。(わたしなんかが願わなくてもきっと実現されると思いますが。)

売上は追わない、でも効率化は徹底

紆余曲折あって、周りの犠牲を強いてまで売上は伸ばさなくてもいい、という考えにたどり着いた來村さん。

とはいえ、院長ひとり看護師(奥様)ひとりで1日平均80人の患者さんを診ているそうで、これには驚きです。

それも、慌ただしくしているわけではなく、それが普通で少し暇にも感じるくらいだといいます。

これを実現できている要因は、「完全」予約制、SNSの活用、機械化です。

・前日までの「完全」予約制
事前準備ができるのでクリニック側の負担は減り、患者側は待たずに診察が受けられる。残業がない。

・SNSの活用
youtubeを配信。
これは集客のためではなく、患者さんへの説明を省けるから。
(同じような質問をされることが多いそう。)

・機械化
自動応答電話の導入
POSレジ、自動精算機の活用

POSレジ、自動精算機の活用をしているクリニックはあるかもしれませんが、自動応答電話を導入しているところは少ないと思います。

少人数のクリニックで電話がひっきりなしになる状態だと診療に支障が出てしまうので、自動応答電話の導入をしたそうです。

直接話す電話が激減し、対応がものすごく楽になったとのこと。

ひとり税理士で活躍されている方々は電話を嫌う傾向があり、電話を極力使わないような体制づくりをしています。(電話は相手の時間も奪うし、じぶんの時間も奪われるので。)

それをクリニックで実践されているのは驚きです。

多くの時間を取られていた電話応対の時間が削減でき、かなり効率化できているようです。

他に、AIによるWeb診断、受付ロボットの導入も検討しているとのこと。

新しいことを取り入れる、効率化をとことん考える、医業に限らず少人数で仕事をしていくうえでは必須で、見習うべき大きなポイントです。

情報発信

YouTube、HPでの月一コラム、インスタグラム、17LIVE、スタンド・エフエム、講演、雑誌やウェブメディアへの記事掲載、など様々な手段で情報発信されています。

少人数の会社は莫大な広告費はかけられませんので、自分のメディアをもち、それにより発信をし続けることは有効です。

自分の考えや思いを発信しておくことで、想いに共感してくれる人、考えが似ている人が寄ってきてくれますから。

まとめ

80%のちからで働く、まずはスタッフの幸せ、完全予約制、自動応答電話の導入、と聞くと、患者がおいてけぼりな印象を受けてしまいますが、実際には全くそんなことなさそうです。

実際にお会いしたわけでも、クリニックに行ったわけでもありませんが、

著書から、

「患者さんを大事にしたい」という目的が常にぶれずに念頭にあること、

そのための手段として、試行錯誤を繰り返していることがよくわかります。

らいむらクリニックの理念は、「東洋医学と西洋医学を融合し、みんなを美しく、元気で、笑顔に!!」です。

わたしの事務所の理念はまだ確定していませんが、経営者の役に立ちたい(さらにいえいば会社が発展することで世の中の役に立ちたい)という強い想いがあります。

わたしも試行錯誤を繰り返しつつ、自分の想いを明確にし、それを実現できるようトライしてみます。

成功した部分だけでなく、失敗談や、後悔していることなどもありのままに書いてくださってるので、参考になりますし、背中を押してもらえます。

医業も、士業でも、その他の業種でも、來村さんのような考えの経営者が増え、幸せの循環ができること、ついつい祈ってしまいます。

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