商業登記

商業登記 公認会計士はできる、税理士はできない

法人は様々な場面で登記をする必要があります。

一般的なものとして、設立登記、役員変更、本店移転、代表取締役の住所変更、などです。

医療法人は毎年の資産の登記もあります。

登記は本来、司法書士の業務区分です。

司法書士以外に商業登記ができるのは、弁護士と公認会計士です。

税理士はできません。

根拠を記しておきたいと思います。

登記は司法書士の仕事

司法書士法3条において下記のように定められています。

司法書士法3条(業務)

司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。

一 登記又は供託に関する手続について代理すること。

二 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(省略)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。

三~省略

司法書士法73条(非司法書士等の取締り)

司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

このように、登記は原則、司法書士の業務区分です。

公認会計士は登記できる

原則はそうですが、「他の法律に別段の定めがある場合」は、司法書士以外も登記を行えます。

この「他の法律」にあたるとされているもののひとつが公認会計士法2条2項です。

公認会計士法2条(公認会計士の業務)

公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする。

2 公認会計士は、前項に規定する業務のほか、公認会計士の名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の調製をし、財務に関する調査若しくは立案をし、又は財務に関する相談に応ずることを業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。

3 省略

直接的に登記ができるとは書いてありませんが、下記の法務省民事局長回答により、公認会計士は業務に付随する商業登記が可能と考えられています。

計理士又は公認会計士、会計士補の登記申請書類の作成及び申請代理について(昭和25年7月6日民事甲第1867号民事局長回答)

計理士又は公認会計士、会計士補が会社その他法人の設立を委嘱された場合その附随行為として登記申請書類(定款、株式申込書、引受書、創立総会議事録等の添付書類を含む)の作成及び申請代理を為すことは、司法書士法(昭二五、五、二二法律第一九七号)第十九条の正当の業務に付随して行う場合に該当し差支えないと考えられますが、いささか疑義がありますので御回示願いたく照会いたします。

回答

照会に係る標記の件は、貴見の通り積極に解して差し支えない

※回答にある司法書士法19条(非司法書士等の取締り)は改正され、現行は73条になっています。

現行の73条には「正当の業務に付随して」の文言が削られているので、この回答は無効では?との疑問をもたれている方もいらっしゃるようです。

旧司法書士法19条(非司法書士等の取締り)

司法書士でない者は、第一条に規定する業務を行つてはならない。但し、他の法律に別段の定がある場合又は正当の業務に附随して行う場合は、この限りでない。

司法書士法73条(非司法書士等の取締り)

司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

税理士は登記できない

税理士法は、司法書士法73条の「他の法律に別段の定めがある場合」に該当する法令ではないと考えられているので登記はできません。

下記のような法務局民事局長回答が出ています。

税理士が登記申請書類の作成及び申請代理の可否について(昭和35年3月28日付民事甲第734号民事局長電報回答)

計理士または公認会計士が会社その他法人の設立を委嘱された場合、その附随行為として登記申請書額の作成及び申請代理をなすことができるが、税理士についてはこのような設立及び附随行為はできないと思料いたしますところ、いささか疑義が生じましたので至急電信にて回報下さるよう照会します。

回答

昭和三十四年十二月十一日付電報番号第四九七号で問合せの件、貴見のとおりと考える。

(補足)弁護士も登記できる

弁護士法3条1項は司法書士法73条の「他の法律に別段の定めがある場合」に該当する法令と考えられているので、弁護士は登記(商業登記・不動産登記)を行えます。

弁護士法3条(弁護士の職務)

弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。

まとめ

公認会計士の先生がいる事務所で働いている職員は、税理士も登記申請代理人になれると勘違いしている場合があります。

業務区分を間違えずに違反とならぬよう気を付けたいところです。