社員と理事

医療法人における社員とは?理事とは?

医療法人には社員と理事がいます。

それぞれの違いについて確認しておきましょう。

社員とは?

医療法人における社員とはどんな人を指すのでしょうか?

株式会社でいう株主

医療法人の社員とは
いわゆる従業員のことではなく株式会社の株主に相当する立場の者を指します。

医療法人の構成員であり、
社員総会において一人一個の議決権を有しています。

医療法46条の3の3

社員は、各一個の議決権を有する。

医療法人の社員は株式会社でいう株主、
とはいいながらも1点大きな違いがあります。

それは、
株式会社が「一株式一議決権」であるのに対して、
医療法人は「一社員一議決権」という点です。

出資持分による差はありません。
というかそもそも出資の有無が社員の要件となっていないので、
出資をしていなくても社員になれるし、
逆に出資していても社員にならなくてOKということです。

ただ、実際には、
出資していない社員は大勢いますが、
出資しているのに社員じゃない者を見たことはありません。

3名以上が望ましい

株式会社の場合、株主の数に決まりはありません。
(上場の場合は除く。)

同じように、医療法人についても社員の数に決まりはありません。
(法的根拠がない、という意味です。)

ないんですが、
厚生労働省が公開している社団医療法人定款例(最終改正平成30年3月30日)によると3名以上が望ましいとされており、実際に、多くの医療法人で3名以上置いています。

医療法人は常に乗っ取られる可能性がある

株式会社の場合
出資持分に応じた議決権ですし、
株主1人でもOKなので、
1人で全額出資していれば乗っ取られる危険性はありません

しかし、医療法人の場合
一社員一議決権であること、
社員総数3名以上が必要であることから、
1人で全額出資していても乗っ取られる危険性が常にあります。

よって、社員の人選には細心の注意を払わなければなりません。

安易に外部の者を社員として受けいれることは危険です。

一般的には親族で固めるので心配ないことが多いんですが、
家族であっても不和により仲たがいしてしまった場合には乗っ取られる可能性があります。

じぶん一人で全額出資していたとしても
人数の多いほうが勝ってしまうわけですから、
じぶん以外の2人の社員が結託すれば乗っ取られてしまう、
ということです。

理事とは?

医療法人における理事とはどんな人を指すのでしょうか?

株式会社でいう取締役

医療法人の理事とは
株式会社でいうところの取締役
に相当する立場です。

社員=理事である必要はないんですが、
社員=理事とし、親族で固めているところが多いです。

1点お気を付けいただきたいのは、
管理者は必ず理事にならなければいけない
という決まりがある点です。

医療法46条の5第6項

医療法人は、その開設する全ての病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院(指定管理者として管理する病院等を含む。)の管理者を理事に加えなければならない。ただし、医療法人が病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を二以上開設する場合において、都道府県知事の認可を受けたときは、管理者(指定管理者として管理する病院等の管理者を除く。)の一部を理事に加えないことができる。

よって分院がある場合、
分院の院長は通常その分院の管理者になるわけですから、
分院長は理事に就任する必要がある、ということになります。
ただし、上記医療法46条の5第6項の但し書きのように、
都道府県知事の認可を受けたときは、管理者であっても理事に加えなくてもOKです。

そこで安易に理事にしたついでに社員にもする、
とはしないようにしてください。

社員は出資していなくても一議決権を持ちます。

理事と社員は全くの別物であることは忘れないでください。

理事長は株式会社でいう代表取締役

医療法人の理事長とは
株式会社でいうところの代表取締役
に相当する立場です。

医療法人の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有しており、
原則医師または歯科医師である必要があります。

医療法46条の6の2

理事長は、医療法人を代表し、医療法人の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

医療法46条の6

医療法人(次項に規定する医療法人を除く。)の理事のうち一人は、理事長とし、医師又は歯科医師である理事のうちから選出する。ただし、都道府県知事の認可を受けた場合は、医師又は歯科医師でない理事のうちから選出することができる。

3名以上

医療法により、原則3名以上の理事を置くよう定められています。

医療法46条の5

医療法人には、役員として、理事三人以上及び監事一人以上を置かなければならない。ただし、理事について、都道府県知事の認可を受けた場合は、一人又は二人の理事を置けば足りる。

まとめ

社員≒株主
理事≒取締役
です。

≒(ニアリーイコール)であって
=(イコール)ではないことを認識しておきましょう。

また、多くの医療法人で社員=理事となっており、
同じものと誤解していらっしゃる方がいますが、
社員と理事は全くの別物であり連動させる必要がないことも覚えておきましょう。