会社つくりました!法人口座はネット銀行だけでOK?

会社をつくったらまず最初にやるべきことは法人口座をつくることです。

この法人口座、ひと昔前は簡単につくれたんですがここ数年は審査が厳しくなり簡単にはつくれなくなりました。

マネーロンダリングや犯罪行為に利用されるなど、銀行口座が悪用されるケースが増えていることがその理由と言われています。

そんな中、実店舗のある銀行に比べ審査がゆるいネット銀行で口座開設される方が増えています。

本日は、ネット銀行だけで業務に支障は出ないのか?について解説します。

税金の納付

法人が税金を納める方法は下記の通り複数あります。

  • 納付書による現金納付
  • ダイレクト納付
  • インターネットバンキング
  • クレジットカード納付
  • スマホアプリ納付
  • コンビニ納付(QRコード)

国税庁の発表によると令和4年度のキャッシュレス納付割合は35.9%とのこと。

納付書による現金納付が主流ではあるものの、キャッシュレス納付の割合は年々増えています。
「令和4年度におけるオンライン(e-Tax)⼿続の利⽤状況等について」参照)

キャッシュレス納付の代表格は「ダイレクト納付」です。

ダイレクト納付とは、ネット上の操作(e-taxやel-tax)により指定した口座から即時に又は期日指定して納税ができるというもの。

金融機関の窓口に行く必要がなく、また、税理士と契約している場合には税理士側だけの操作で納付まで行えるのでとっても便利です。

ただ、このダイレクト納付、どの銀行でもOKというわけではありません。

実店舗のある金融機関なら大体OKなんですが、ネット銀行の場合、現状、GMOあおぞらネット銀行さんしか対応していません。(国税・令和6年1月18日時点/地方税・令和6年4月1日時点)

利用可能金融機関一覧(国税)はこちらをご確認ください。

利用可能金融機関一覧(地方税)はこちらをご確認ください。

GMOあおぞらネット銀行以外で法人口座としてよく利用されているネット銀行は

・楽天銀行

・PayPay銀行

・住信SBIネット銀行

あたりなんですが、これらの銀行はダイレクト納付非対応です。

ただ「ダイレクト納付」は不可ですが、「インターネットバンキング」での納付は可能です。
※ただし、住信SBIネット銀行は地方税は可能だが、国税は不可。(令和6年6月12日時点)

「インターネットバンキング」も「ダイレクト納付」と同じようにネット上の操作(e-taxやel-tax)により指定した口座から納税できますが、金融機関のサイトにログインする必要があるため、税理士側だけで操作が完結しないという特徴があります。

法人の場合、個人事業と違って顧問税理士をつける方が多いでしょうから税理士側だけで作業が完了する「ダイレクト納付」ができる金融機関を選ぶというのは重要なポイントです。

社会保険料

社会保険料の納付は窓口納付も可能ですが、毎月のことですので口座振替にしている会社さんが多いです。

現状、ネット銀行で対応しているのは、GMOあおぞらネット銀行のみ
(令和6年4月1日時点)

利用可能金融機関一覧(社会保険)はこちらをご確認ください。

労働保険料

労働保険料も社会保険料と同じで窓口納付でも口座振替でもどちらでもOKです。

現状、ネット銀行で対応しているところはありません。(令和6年6月12日確認)

ただ、労働保険料の納付は原則年1回のみということもあり口座振替を利用している会社さんは社会保険料に比べるとぐっと少ない印象です。

利用可能金融機関一覧(労働保険)はこちらをご確認ください。

倒産防止共済

倒産防止共済とは、取引先が倒産したとき、その影響で連鎖倒産しないようにするための制度です。

掛金が全額払った期の損金に算入できるので、本来の目的は連鎖倒産防止なんですが節税目的で加入される方が多いです。

(なお、「継続して1年以上事業を行っている中小企業者」が対象なので、開業初年度は加入できません。)

利益の出ている会社さんがまず最初に検討する節税策(厳密には課税の繰り延べですが。)です。

こちら、掛金の引き落とし口座が必要なんですが、現状、ネット銀行は対応していません。
(令和6年6月12日確認)

なお、個人事業であれば楽天銀行とGMOあおぞらネット銀行は対応しています。
(ただ、個人事業で倒産防止共済に加入する方は少ないかと。)

利用可能金融機関一覧(倒産防止共済)はこちらをご確認ください。

まとめると

ここまでの内容をまとめたものがこちら。

こちらをふまえて個人的見解を3つほど

①ネット銀行だけでも法人経営は可能

②ネット銀行オンリーにするならGMOあおぞらネット銀行が便利

③倒産防止共済に加入したいならネット銀行以外の口座は必ず必要

それぞれ少し説明を加えます。

①ネット銀行だけでも法人経営は可能

税金、社会保険、労働保険は、「ダイレクト納付」や「口座振替」は不可能なネット銀行がほとんどですが、納付書による現金納付はもちろんOKですし、インターネットバンキングが可能なところは多いので問題はありません。

また、倒産防止共済は加入を検討していない方も多いです。

ということは、多少の不便はあるもののネット銀行だけでも法人経営は可能ということです。

②ネット銀行オンリーにするならGMOあおぞらネット銀行が便利

ネット銀行だけでも法人経営を可能ではあるものの、できるだけ不便は省きたいという人にはGMOあおぞらネット銀行がおススメです。

ダイレクト納付や社会保険料の口座振替に対応しているのは、現状(令和6年6月12日現在)、GMOあおぞらネット銀行のみですので。

③倒産防止共済に加入したいならネット銀行以外の口座は必ず必要

倒産防止共済の加入を検討しているのであればネット銀行以外の口座開設は必須です。

ただ、こちら「継続して1年以上事業を行っている中小企業者」しか加入できません。

ですので、とりあえず設立当初は口座開設しやすいネット銀行だけつくっておいて、2年目以降、少し余裕のできてきた段階で実店舗のある金融機関で口座開設する、という流れでもいいのかと思います。

総括

実店舗のある金融機関に比べて審査がゆるく口座がつくりやすいネット銀行ではありますが、法人が利用する金融機関としては、現状、不足している部分はまだまだあります。

とはいえ、かなりのスピードで拡大しているのは事実です。

そう遠くない未来にほとんどのネット銀行が、ダイレクト納付にも社会保険や労働保険の口座振替にも倒産防止共済にも対応してくるものと推測はしています。

本記事が、法人口座開設の際のお役に立てれば幸いです。