株式会社の代表取締役、自宅住所公開しなくてもよくなります

令和6年4月現在、株式会社の代表者の自宅住所は登記事項です。

よって、登記簿をとれば誰でも代表者の自宅住所を知ることが可能です。

代表者の自宅住所が記載されることについては、プライバシー保護の観点から多くの反対意見や見直しを求める声がありました。

それらの声を受けて、昨年末、法務省から法人登記の際に代表者の住所を一部非公表とできるようにする省令改正案が出されていたんですが、令和6年10月1日から施行されることが決定しました。

登記簿にはどんな情報が載る?

株式会社の登記簿には

  • 「商号」
  • 「本店の住所」
  • 「目的」
  • 「資本金の額」
  • 「取締役の氏名」
  • 「代表取締役の氏名及び住所」

などが記載されます。

実際の画像はこんな感じ。

「商号」「本店の住所」など会社の基本的な情報が記載されることには何の問題もありませんが、代表者の自宅住所が記載されることについては、これまで多くの反対意見がありました。

わたし自身、これまで法人設立のお手伝いをたくさんしてきましたが、自宅住所を公開しなければならない点に抵抗感を示す方は数多くいらっしゃいました。

(蛇足ですが、株主の氏名や住所は登記事項ではないので登記簿には載りません。)

登記簿は誰でも数百円払えば取得可能です。

最近は法務局に出向かずネットでも簡単に取り寄せられるで、登記簿取得のハードルはとっても低いです。

さらに、登記情報提供サービスを利用すれば、登記簿を取得するよりも早くかつ低い金額でネット上で登記事項を確認することが可能です。

こんなに簡単に、かつ、誰でも取得できるものに自宅住所を載せなければならないというのを「こわい」と考える人が多いのもうなずけます。

マンション名と部屋番号は今でも省略可能

自宅がマンションの場合、マンション名や部屋番号を省略して登記することは現時点でも可能です。

例えば「埼玉県越谷市越ヶ谷〇丁目〇番〇号〇〇マンション201号室」の場合、登記は「埼玉県越谷市越ヶ谷〇丁目〇番〇号」まででOKということです。

これまでわたしが法人設立に関わったお客様の多くが上記の通りマンション名以下は省略して登記しています。

やはり自宅住所が公開されるのはできるだけ避けたいと考える方が多いです。

ただ、戸建ての場合は省略できる箇所がないためどうしても自宅の全住所を公開することになってしまいます。

「代表取締役等住所非表示措置」のポイント

今回決定したのは「一定の要件の下、株式会社の代表取締役、代表執行役又は代表清算人の住所の一部を登記事項証明書や登記事項要約書、登記情報提供サービスに表示しない」(代表取締役等住所非表示措置)というもの。

法務省ホームページの「代表取締役等住所非表示措置について」を参照しながらポイントを絞って解説します。

すでに登記されているものは非公開にできない

「代表取締役等住所非表示措置について」

今回の措置ですが、「登記申請と同時に申し出ること」が要件です。

つまり、施行日以降に「新しく株式会社を設立した」「代表取締役の住所変更があった」といった場合にのみ非公開を希望することができるということです。

「既に登記簿に記載されている代表取締役の自宅住所を令和6年10月1日以降非公開にする」なんてことはできませんので注意しましょう。

改正後も市区町村までは公表される

「代表取締役等住所非表示措置について」

今回の措置ですが、住所全部が非公開となるわけではなく、最小行政区画までは公開されます。

具体的には、「東京23区と指定都市は区まで、それ以外は市区町村まで」です。

例を挙げると次の通りです。

  • 東京都中央区
  • 埼玉県さいたま市浦和区
  • 埼玉県越谷市
  • 愛知県名古屋市中区
  • 愛知県海部郡蟹江町

通常、最小行政区画に指定都市の区は入りません。

例えば「埼玉県さいたま市」「愛知県名古屋市」などで、定款の本店所在地の最小行政区画もここまでです。

なぜだか本措置の場合、最小行政区画といいつつ指定都市は区まで公開となっているので該当地区の方は気にしておきましょう。

合同会社は対象外

「代表取締役等住所非表示措置について」

本措置の対象は「株式会社の体表取締役、代表執行役又は代表清算人」に限られており、合同会社、医療法人、NPO法人、一般社団法人などは対象外です。

今後対象範囲は拡大していくものと推測しますが、まずは株式会社のみです。

合同会社は設立費用をおさえられるので人気ですが、代表者の自宅住所が非公開にできない点は今後しばらくデメリットとなりそうです。

銀行融資や不動産取引で不利益も?

「代表取締役等住所非表示措置について」

基本的にはメリットが大きい本措置ですがデメリットもあります。

それは、金融機関から融資を受ける際に不都合が生じたり、不動産取引の際に必要書類が増えるなど、一定の支障が生じる可能性があるということです。

法務省ホームページでも注意喚起していますが、そういったデメリットが起こりうる可能性も考慮して慎重に検討することが必要です。

私見

今の時代、自宅住所の公開に抵抗感を覚える方は多いです。

わたしもそのひとりです。

わたしは個人事業主なので自宅を公開する必要はありません。

しかし税理士の場合、税理士情報検索サイトに事務所の住所を載せる必要があり、自宅兼事務所としてしまうと必然的に自宅を公開することになってしまいます。

それは避けたい、、、との気持ちもありレンタルオフィスを借りています。(他にも理由はありますが)

プライバシー侵害の恐れ、悪意を持った誰かからの攻撃なんかを考えるとやはり自宅公開はできるだけ避けたいところです。

代表者の自宅住所を公開することによる有用性よりもプライバシー保護、個人情報保護優先でいいと考えています。

したがって、個人的には本措置が決定されたことには良いと感じています。

今後、対象範囲が合同会社など他の会社形態にも拡大していくことを望みます。