税務署寄りの税理士と納税者寄りの税理士

税務署寄りの税理士vs納税者寄りの税理士

今回は、税務署寄りの税理士と納税者寄りの税理士について考察してみました。

税理士の使命

税理士法1条において税理士の使命は下記のように定められています。

税理士法1条(税理士の使命)

税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。

つまり、税理士は「独立した公正な立場」=中立な立場、を求められているということになります。

税務署寄りの税理士vs納税者寄りの税理士

法律上、税理士は「独立した公正な立場」を求められていますが、

「あの人は税務署寄りの税理士だ。こちらの人は納税者寄りの税理士だ。」

と分けられることがあります。

これまでふたつの税理士事務所での勤務経験がありますが、

「あえて」どちらかに分けるとしたら、

A先生は「税務署寄り」、

B先生は「納税者寄り」の方でした。

それぞれの特徴をみていきます。

「税務署寄り」の税理士

「税務署寄り」の税理士は、

法律に沿っているか否か以上に、

税務調査に耐えられるか否かを基準に税務判断をします。

A先生、月次チェックの段階で交際費否認はしょっちゅうでした。

担当職員に対して、
「税務調査官になったつもりで月次チェックするように。」との指導があったので、
事務所全体でそのスタンスは維持されていました。

試算表をお客様に提示する前には必ず代表のチェックがあり、
いびつで変動が大きい経費や多すぎる交際費なんかは必ず突っ込みが入りますので、
担当者レベルでもA先生の考えは徹底されていました。

がちがちに厳しいチェックだったので、お客様からしたら、うるさいし融通が利かないと思われていたかもしれません。

(経営者仲間から「プライベートだろうと何だろうと全部経費にしちゃってるよ!」なんて話をきくとなおさら・・。)

ただ、普段から必要な根拠資料は徹底して確認していましたし、あやしい経費なんて一切計上されないので、税務調査が入った場合是認が多かったですし、(それが理由かどうかは不明ですが)そもそも税務調査自体が少なかったです。

A先生、税務調査に耐えられるか否かを第一に考えた処理をしてはいましたが、税務署が間違っていると思うことについては意見していました。
(調査時ではなく更正の請求時ですが。)

声をあらげたりはしませんが、冷静に意見して粘り強く掛け合っている姿は見たことがありますので、「あえて」税務署寄りというくくりには当てはめましたが、決して税務署のいいなりというわけではありませんでした。

「納税者寄り」の税理士

「納税者寄り」のB先生は、

顧問先の出してきた経費をこちらが省くということはほぼありませんでした。

顧問先は事業に関係した経費しか出してこないという前提で月次処理をすすめており、
どう考えてもアウトと思われる経費はさすがに外しますが、原則こちらが判断するということはありません。

経費の範囲についてアナウンスはもちろんしますし、グレーなものはグレーだと言います。
しかし、それを実際にどうするかは最終的には会社の判断
に任せていましたし、調査時に指摘されてもそれは会社で説明してください、というスタンスです。

A先生の事務所に比べると、税務調査の数・調査時の指摘事項はとても多かったです。
(勤務中わたしが知る限り是認は1件もありませんでした。)

ただ、B先生は「会社で説明してください。」とはいいつつも、調査時に税務署職員とめちゃくちゃ戦っていました。

アピールも含め、ほぼ毎回税務署職員に対して声を荒げ抗議していましたので、

顧問先としては「自分の為にたたかってくれている。」という気持ちはあったと思います。

ただ、結局はなにかしらの指摘事項があり、それに対して延滞税・加算税を払う羽目にはなっていました。

わたしはどちらの税理士?

今回、「あえて」税務署寄りの税理士と納税者寄りの税理士に分けましたが、両者に明確な定義があるわけではありません。

あくまで、わたしの知る先生を2パターンに分けたにすぎません。

どちらの先生も、タイプは違えど尊敬する先生です。

両パターンの先生を知ったうえでわたしの選択する税理士像は?

いいこちゃんのように聞こえるかもしれませんが、

どちら寄りでもない税理士法1条で定められている「独立した公正な立場」の税理士でありたいと思っています。

本来経費にできたと思われるものまで省きたくありませんし、かといってグレーな経費を入れたり、過度な節税をして、結果、納税者に不利益をもたらすこともしたくありません。

納税者から報酬を頂くので、全面的に納税者の味方でいたいという思いはどこかにあります。

しかし、それは税理士の使命である「独立した公正な立場」を超えるものではないし、
納税者の間違った解釈の代弁者となるべきではない、と考えています。

「使える税制は使い、適度な節税は提案するが、過度でグレーな節税はしない。」と決めています。

「グレーなことをしておいて、税務調査時にたたかう。」
これを望むお客様もいるかもしれませんが、

わたしは、
「公正な立場で、納税義務者の信頼にこたえ、納税義務の適正な実現を図りたい」と考えています。

グレーなことをしておいて、大丈夫かな?とドキドキしながら日々過ごしたくありません。

たとえ本人が希望したとしても、納税者にリスクを背負わせることは、税理士はすべきでないというのがわたしの意見です。

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