遺言書どうする?

こんにちは、越谷市の税理士、恒川です。

数年前まで遺言といえば

「自筆証書遺言」

「公正証書遺言」

「秘密証書遺言」

の3つでした。

ですが、令和2年7月から自筆証書遺言を法務局で保管してくれる「自筆証書遺言書保管制度」なるものができ、遺言の選択肢がひとつ増え下記の4つになりました。

自筆証書遺言(保管制度利用なし)

自筆証書遺言(保管制度利用あり)

公正証書遺言

秘密証書遺言

それぞれについて見ていきます。

自筆証書遺言(保管制度利用なし)

自筆証書遺言とは、遺言者が全文を手書きする遺言のことを言います。

以前は財産目録含め「すべて」を手書きする必要がありましたが、平成31年1月13日民法改正により財産目録については自筆で作成する必要がなくなりました。
(パソコンで作成したもの以外に、登記事項証明書や通帳のコピーでもOK。)

・遺言作成時に法務局や公証役場など公の機関に行く必要がなく手軽にできる

・お金がかからない

といったメリットがあるためよく利用されています。

ただ、作成時に専門家の目に触れることなくつくれるため形式に不備があり遺言が無効となるリスクがあったり、相続発生時に家庭裁判所の検認が必須というひと手間がかかるといったデメリットがあります。

自筆証書遺言(保管制度利用あり)

次に、令和2年7月から始まった「自筆証書遺言書保管制度」を利用しての自筆証書遺言。

従来の保管制度なしの自筆証書遺言と大きく違う点は2つ。

・法務局で形式の確認をしてもらったうえで保管までしてもらえるので安心

・家庭裁判所の検認が必要ないので相続発生時に手間がかからない

最初に申請手数料として3,900円がかかりますが、この金額で形式の確認のみならず保管までしてもらえるのはとってもありがたい。

また、相続発生時に家庭裁判所での検認が不要のため、相続人に対しても親切です。

加えて他の方式にはない利点として「死亡後の通知制度」というものがあります。

遺言者が死亡したとき、「法務局に遺言書が保管されていますよ!」という事実を指定した人に対して知らせてくれるというもの。

遺言者が遺言を書いたこと自体を家族に伝えていない場合にとっても有効です。

自宅に遺言を保管していると見つけてもらえないリスクがありますし、公正証書遺言は公証役場で管理されるので安心ではあるものの、相続人に対する通知制度はないので遺言の存在を秘密にしていた場合見つけてもらえないというリスクがあります。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、遺言者が公証人と証人2名の前で遺言の内容を口頭で告げ、公証人が文章にまとめた遺言のことを言います。

財産の規模によりますが、数万円以上の費用がかかります。

自筆証書遺言に比べるとかなりのお金はかかりますがメリットは多いです。

・公証人が作成してくれるので形式の不備がない

・家庭裁判所の検認が必要ないので相続発生時に手間がかからない

・遺言者が病気等で公証役場に行けない場合は出張してくれる

・公証人が遺言の内容について相談にのってくれる

上2つ「形式の不備がない」「検認が不要」というメリットは、自筆証書遺言(保管制度利用あり)も同じですが、下2つ「出張してくれる」「相談にのってくれる」は、公正証書遺言オンリーのメリットです。

内容について不安があり相談や質問をしたい場合には公正証書遺言が有効です。

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言の内容を秘密にしたまま公証人に遺言の存在のみを証明してもらう遺言のことを言います。

自筆証書遺言と違って自筆である必要はなく、パソコンで作成してもOKです。

ただ、利用者はかなり限定的です。

秘密証書遺言は、遺言の内容が誰にも知られないというのがイチバンのメリットですが、それは自筆証書遺言(保管制度利用なし)でも可能です。

また、自筆証書遺言(保管制度利用あり)や公正証書遺言であっても第三者以外に内容を秘密にすることは可能です。

中途半端にお金がかかるわりには大きなメリットがなく、相続発生時に検認が必要といった手間もかかることから利用者は多くありません。

おススメは?

上記4つを一覧にまとめたものがこちら。

現実的な選択肢としては、「自筆証書遺言(保管制度利用あり)」と「公正証書遺言」の2つかと。

遺言の内容について専門家に相談にのってもらいたいのであれば公正証書遺言一択です。

自筆証書遺言(保管制度利用あり)は、法務局の方がチェックしてくれますが、それはあくまで形式についてのチェックであり、内容についてはチェックしませんし相談にものってはくれません。

専門家への相談は必要ない、形式チェックだけしてくれれば大丈夫という場合には、公正証書遺言に比べて費用がかからない自筆証書遺言(保管制度利用あり)で良いでしょう。

それぞれの状況に応じて、ベストな選択をしましょう。