理事長変更

医療法人が理事長変更する際の手続き

親子間の医業承継をスムーズにおこなうために医療法人を設立する方もいらっしゃるでしょう。

個人クリニックの医業承継は、親→廃業、子→新規開業となり、事業を親から子に譲渡することになります。

手続きが煩雑ですし、子側は購入資金を準備しなければならないので経済的負担が大きく大変です。

(事業承継税制を利用するという選択もありますが、こちらの手続きもまた煩雑ですし、さらに贈与税が即免除になるわけではなくあくまで猶予なので使いにくい、という側面があります。)

医療法人の場合は、理事長変更するだけで承継が完了するので、個人クリニックに比べ随分と楽です。
※平成19年4月1日以降設立の「持分の定めのない医療法人」に限ります。平成19年3月31日以前に設立された「持分の定めのある医療法人」の場合は、出資金の譲渡という手続きが必要になります。

理事長変更する「だけ」ではあるんですが、管理者や代表者の変更も伴うため、株式会社の代表取締役変更のように登記だけすれば終わり、といった単純なものではありません。

法務局以外に、保健所、都道府県(又は指定都市)、厚生局等への届出も必要になり、なかなか大変です。

漏れのないように手続きを完了させましょう。

手続き一覧

主な手続は次の通りです。

他にも医師会、福祉事務所、環境管理事務所などへの連絡や、関係各所への挨拶なども必要となります。

ここで全てを網羅することは難しいので、メインの手続きにしぼって紹介したいと思います。

法務局 → 理事長変更

まずは、変更日から2週間以内に変更登記申請をおこないます。

登記申請に必要な資料は次の通りです。

登記申請に必要な資料

定款の写し
社員総会議事録
理事会議事録
旧理事長の辞任届
新理事長の医師免許証の写し
新理事長の就任承諾書 ※議事録を援用するのであれば不要
新理事長の印鑑証明書


印鑑届出書
印鑑カード交付申請書

法務局のHPにひな形があります。登記申請書はこちら。印鑑届出書はこちらです。

都道府県(又は指定都市) → 理事長変更

都道府県(又は指定都市)に対して、「役員変更届」と「登記完了届」を提出します。
明確な期限は決められていませんが、「遅滞なく」とされているので早めに出しましょう。

役員変更届に必要な資料

社員総会議事録
新理事長の履歴書
新理事長の印鑑証明書
新理事長の役員就任承諾書
旧理事長の辞任届

登記完了届に必要な資料

登記事項証明書

地域によって必要な添付資料や届出書の名称が若干変わることはありますが、大体同じです。

保健所 → 理事長及び管理者変更

保健所に「病院・診療所・助産所の開設許可(届出)事項変更届」を変更日から10日以内に提出します。

病院・診療所・助産所の開設許可(届出)事項変更届に必要な資料

新理事長の医師免許証の写し
臨床研修終了登録証の写し(2004年度以降に医籍登録した者のみ)
新理事長の履歴書(顔写真付き)
社員総会議事録 ※管理者が医療法人の理事以上であることを確認する書類として必要なので、それが分かれば別資料でもOK

都道府県への届出書と同じく、地域によって必要な添付資料や届出書の名称が若干変わりますので、各保健所にてご確認ください。

厚生局 → 管理者及び代表者変更

厚生局に「保険医療機関届出事項変更(異動)届」を提出します。
期限は特にありませんが、「速やかに」とされていますので、早めに出しておきましょう。

保険医療機関届出事項変更(異動)届に必要な資料

新理事長の保険医登録票の写し
保健所に提出した変更届の写し(受付印のあるもの)

厚生局によっては、追加で登記事項証明書が必要なところもあるようです。
各厚生局にてご確認ください。

税務署、都道府県、市町村 → 理事長変更

税務署、都道府県、市町村に対して「異動届出書」を提出します。

期限は、税務署は「速やかに」、都道府県や市町村は地域によって違います。(東京都や埼玉県は変更日から10日以内。)

いずれにしろ早めに提出しておいた方がいいでしょう。

移動届出書に必要な資料

登記事項証明書の写し

税務署への届出は原則添付資料不要となっているんですが、内容確認のため、登記事項証明書の写しを求められることがあります。

都道府県、市町村への異動届出書には登記事項証明書の写しが必要なので、税務署への異動届出書にもはじめから添付しておいた方が安心です。

年金事務所 → 事業主変更

年金事務所に対して、変更日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険事業所関係変更(訂正)届」を提出します。

添付資料は不要です。

まとめ

理事長変更「だけ」とはいえ、管理者及び代表者の変更も伴うので、株式会社の代表変更に比べるととても大変です。

漏れの無いよう手続きをおこない、医業承継を完璧に終わらせましょう。

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