医療法人がお金を借りる際の議事録
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医療法人を経営する顧問先が附帯業務を開始することになりました。
それに伴い大きな借入をおこなうことに。
その際金融機関から、「年間の借入限度額を決議した社員総会議事録をください。」との要望がありました。(厳密には金融機関ではなく保証協会からの要望とのこと。)
これまで、どこの医療法人でも「年間」の借入限度額についての議事録など求められたことはありません。
調べた結果、要望の「年間」の借入限度額についての議事録は不要であることが分かりましたが、いい機会なので、医療法人が多額の借入をする際に必要な議事録についてまとめておきたいと思います。
「多額の借財」につき、理事会の決議が必要
多額の借入をする場合には、理事会の決議が必要です。
根拠となるのは以下の条文です。
医療法46条の7第3項
理事会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を理事に委任することができない。
二 多額の借財
一、三~六省略
「多額」の基準ですが、具体的に○○円以上、○○の○○%以上という明確なものはありません。
会社の総資産や利益等に占める借財の割合であったり、目的等を考慮して総合的に判断することになります。
「借入金額の最高限度の決定」につき、社員総会の決議が必要
条文上、社員総会の決議事項には借入に関する項目は含まれていませんので、社員総会の決議は不要です。
しかし、定款で「借入金額の最高限度の決定」を社員総会の決議事項としている場合が多いので、結果、社員総会の決議も必要な場合が多いです。
厚生労働省が公開している社団医療法人定款例(最終改正平成30年3月30日)を確認すると、「借入金額の最高限度の決定」が社員総会の決議事項となっています。
ただ、ここで必要なのは「借入金額の最高限度額の決定」であって、「年間」の限度額は不要です。
よって、金融機関には下記の文言を含む社員総会議事録を提出しました。
(例)
第1号議案 銀行融資に伴う、借入金の最高限度額決定の件
議長は発言し、○○開設資金の融資を〇〇銀行〇〇支店から受けることについて、借入金の最高限度額を次のように提示し、承認を求めたところ、全員異議なく承認した。
借入金最高限度額 〇〇万円
まとめ
医療法人は決算から3ヶ月以内に各都道府県知事に事業報告書を提出します。
今回、金融機関は、「事業報告書と一緒に、毎期、年間の借入限度額を決議した社員総会議事録も提出しているはず。」と誤解していました。
上述の通り、借入限度額を「毎期」決定する必要はありません。
今回学んだことは、金融機関も間違うということです。
(金融機関のみならず、税務署だってそうです。)
根拠を確認し、不要な資料・誤った資料は出さないようにしたいものです。
(おまけ)株式会社がお金を借りる際の議事録
取締役会のある会社は、「多額の借財」につき、取締役会の決議が必要です。
根拠となるのは以下の条文です。
会社法362条4項
取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
二多額の借財
一、三~七省略
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