髙田 郁さん著「あきない世傳金と銀」で商売の勉強
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髙田郁さん著「あきない世傳金と銀」が2022年8月発売の13巻で完結しました。大好きな作品だったので、すごく寂しい…!
この本は、江戸時代の呉服店の女店主・幸の活躍を描いた作品で、いとう呉服店(のちの松坂屋)十代目店主宇多という女性がモデルになっているそうです。
(最終巻のあとがきでモデルが存在したことを知り、かなりびっくりしました!小説でしかありえない設定だな、と思っていたので。)
この本には、商売をする上で大切なメッセージがたっっくさんつまっています。
買うての幸い、売っての幸せ
主人公幸が店主をつとめる五鈴屋の信条は「買うての幸い、売っての幸せ」です。
商売なのでもちろん儲ける必要はあるのですが、幸はそこを第一の目的としていません。
利益はちゃんと確保しつつも、買う人の「幸せ」、売る人の「幸せ」をまず第一に考えています。
買うての幸い
いい商品を、庶民が手に入れやすいような手頃な値段(あるいは少し背伸びすれば買えるくらいの値段)で販売します。
需要があって、もっと値段を上げても売れるだろうと思えるときでも、変に利益を上乗せしないし、逆に利益度外視で安売りもしない。
つまりは適正価格。商売を「継続」する上で、シンプルだけどすごく大切なことです。
売っての幸せ
買った人が幸せになる姿をみて売った人も幸せになる、ということも勿論あるのですが、それよりも、売ることで、従業員、その商品を作ってくれた人(仕入先)、運んでくれた人(運送屋)、加工してくれた人(技術者)など携わってくれた人皆が幸せになる、ということをいいたいのかと。
幸は、従業員(奉公人)を大切にします。そして、彼ら彼女らの意見をよく聞き、よかれと思ったことはすぐ取り入れます。
仕入先や技術者に対しても、軽く扱ったり、無理な値下げ交渉はしません。
職人を尊敬し、その人たちの生活が成り立つこと、幸せになることを心から願っているんです。
わたしも、幸のように、関わってくれた人皆の幸せを願える人でありたい。
知恵を絞る
幸は「知恵を絞る」ことをとても大切にしています。
意識的に大切にしている、というよりは、好き、なんだと思います。
正確な知識を得たうえで、そこから知恵を絞る。
そうすることで道を拓く。
幸は様々な方法で知識を手に入れていきます。
たくさん本を読んだり、人の話を聞いたり、現場を見に行ったり。
そして、そこから得た知識をもとに知恵を絞り、商売につなげるのです。
つまり、知識+知恵=商売
知識がなければそもそも知恵は生まれないので、まずはここが大切です。
世の中の常識は日々変化しますし、新しい知識もどんどん出てきます。昔の常識や古い知識だけではとうてい太刀打ちができません。(江戸時代ですらそうなのですから、現代なんてなおさら。)
そのため、常に勉強することが大切になります。
幸の、勉強熱心で新しいものを素直に取り入れようとする姿勢は、本当に見習いたい。
そうやって得た知識をもとに知恵を絞りオリジナル作品を次々に世に出していきます。ヒット商品を1つ生み出したらそこで止まっちゃいそうなものですが、幸は止まりません。ずーっと知恵を絞っている。
それは、「知恵を絞る」という行為が、単純に商売上の心得ではなく、生きていく上での心得だったからじゃないかと。(元々幸は学者の娘です。第1巻冒頭で七夕の短冊に「知恵を授かりたい」と書くシーンがあります。商売に携わるずっとずっと前です。)
自分のこと・自分の店のことだけでなく、業界のこと・町のことを考える
幸のすごいところは、自分のことだけ、あるいは自分の店だけが発展すればいいとは思っていない点です。
「呉服業界全体」あるいは「町全体」が発展すればいいと思っている。考え方のスケールがとにかく大きい。
一時期だけブームになって後から見向きもされないものをつくるのではなく、長く世に残るものを手掛けたいと思っており、自分だけ儲かればいい、今だけ儲かればいい、とは少しも考えていないところがすごいです。
そうすると、短期的には損する場合もあるのですが、後からいい情報が得られたり、協力者が現れたりして、最終的には得をしていることが多いんです。(幸自身は損して得取れとは思っていないけれども、結果そうなっている。)
最後に
「あきない世傳金と銀」には、商売をする上で参考になるポイントがたくさんつまっていますので、経営者の方、独立を目指されている方におススメしたい本です。
こちら13巻で完結はしましたが、特別巻が2巻発売されるようです。楽しみ!