「自筆証書遺言書保管制度」を利用してみた
≪メニュー≫
■恒川洋子のプロフィール
■税務顧問
■会社設立・起業支援
■スポット相談
■相続税申告
こんにちは、越谷市の税理士、恒川です。
先日、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用して、遺言書を保管してきました。

以前に税理士会の研修で知って以来、「いつかじぶんでもやってみたいな」とずっと気になっていたもの。
今回ようやく実行に移せたので、そのときのことをまとめておきます。
なぜ遺言書?なぜ自筆証書遺言書保管制度?
わたしはまだ40代なんですが、なぜ遺言書を書こうと思ったのか?
それは、わたしが事実婚で、子どももいないからです。
法律上の配偶者は常に相続人になりますが、事実婚の場合は相続人になりません。
ということは、わたしに何かあった場合、パートナーに財産を残すことができないということ。
すぐに死ぬ予定はないし、大きな財産があるわけでもないんですがね(^^;
遺言書がなければ、相続人になるのは今なら両親、そのあとは兄弟。
甥っ子・姪っ子はいないので、兄弟が先に亡くなってしまえば、相続人は誰もいなくなってしまいます。
いずれにしても、パートナーには渡りません。
そんなことを考えると、やっぱり書いておいたほうがいいかな、と。
ということで、書くことにしました。
令和8年現在、遺言の残し方には4つの方法があります。
・通常の自筆証書遺言
・法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言
このうち「秘密証書遺言」を利用する人は少ないため、現実的にはそれ以外の3択。
現実的な3つの選択肢を、ざっくり比較すると——
まず通常の自筆証書遺言は、自筆で遺言書を作成して自宅や金庫などに保管しておくというもの。
手軽に作れてお金がかからないのがいいところですが、相続が発生したら家庭裁判所の検認が必要でちょっと面倒だし、形式に不備があると無効になってしまう可能性もあります。
次に法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言は、自筆の遺言書を法務局に持参し、形式を確認してもらったうえで預けるというもの。
法務局がチェックしてくれるので形式不備の心配がなく、相続発生時の検認も不要です。
かかるお金も保管申請手数料3,900円だけとリーズナブル。
最後に公正証書遺言は、公証役場で遺言内容を口頭で伝え、公証人に遺言書を作成してもらうというもの。
公証人がつくってくれるので形式不備はないし、検認も不要。
内容の相談にものってくれるし、体調によっては病院などへ出張してくれるのも心強いです。
そのかわり、数万円~(財産の規模によって変わります)というある程度の費用はかかります。
詳しくは過去記事をどうぞ。
今回わたしは「法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言」を選んだわけですが、理由は3つ。
・形式不備がなくて安心
・家庭裁判所の検認がいらないので、財産を受け取る人がラク
・お金があまりかからない
わたしみたいに、比較的若くて死期が近いわけではない人が「とりあえず書いておきたい」という場合には、ちょうどいい制度だと思います。
若ければ若いほど、財産の内容も家族関係も、これから変わる可能性が高いです。
書き直すことも考えると、公正証書遺言はハードルがかなり高い。
ある程度財産がある方や高齢の方ならいいと思うんですが、そこまでの財産はないし、まだ若い——というわたしみたいなタイプには、公正証書遺言はちょっと・・・です。
かといって、自筆証書遺言を書いて自宅で保管しておくのも心配。
長生きすればするほど、どこに保管したか忘れそうだし、そもそも見つけてもらえないかもしれない。
遺言書を書くハードルを下げてくれたこの制度、始まってくれてよかったなと思います。
遺言書を保管するまでの流れ
遺言書を保管するときの流れはこちら。

それぞれについて説明します。
ステップ1 遺言書を作成する
なにはともあれ、まずは遺言書を作成します。
この制度、法務局の方が書き方を教えてくれるわけではありません。
あくまで、じぶんで調べて書き上げて、それが間違っていないかをチェックしてもらう、という流れ。
わたしは、司法書士・柴崎智哉さんの著書『そのまま使える!家族が困らない遺言書の書き方』を参考につくりました。
法務省のHPにも文例はあるんですが、ノーマルなパターンしかなく。
この本だと、ケース別にいろんなパターンの文例(内縁の妻や夫に遺産を渡す、など)が載っていて、そのまま使えてとても役立ちました。
遺産の分け方・文言を決めたら、清書します。
上下左右の余白が「何ミリ以上」と決められているので、書く紙は法務省HP「自筆証書遺言書保管制度」内の様式ページにあるこちらを印刷しました。


上の四角に「遺言書」と書き、右下の四角にはページ数(例:1/4)を記載します。
ページ数は、財産目録も含めた総ページ数です。
財産目録だけは手書きでなくてもOKなので、そこはパソコンで。
手書きした遺言書の最後のページと、パソコンでつくった財産目録の全ページに、署名・押印が必要です。
ステップ2 申請書を作成する
保管申請書を作成します。


PDFにそのまま入力できるので、入力して印刷。
ステップ3 添付書類等を準備する
当日必要な資料は、下記の5つ。
・遺言書
・保管申請書
・本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証など)
・本籍の記載のある住民票の写し
・3,900円分の収入印紙

ステップ4 予約する
保管できる法務局は、どこでもOKというわけではなく、下記3つのうちいずれかを管轄する法務局です。
・遺言者の住所地
・遺言者の本籍地
・遺言者が所有する不動産の所在地
どこの法務局に保管するか決めたら、予約します。
電話や窓口でも予約できますが、ネット予約が便利。


ステップ5 法務局に行く
ステップ3で準備した資料と印鑑(実印でなくてもいいのですが、実印にしました)を持って、法務局へ。
あらかじめ押印していくので印鑑は本来不要なんですが、何か不備があってやり直すことがあったらいやだな、と思って持って行きました。
——後述しますが、実際に財産目録の修正で署名・押印をやり直したので、持って行ってよかったです。
時間どおりに窓口へ行くと、担当の方が対応してくれました。
準備した資料一式を渡します。
複数人でチェックをするため「1時間くらい待ってほしい」と言われたので、駐車場で待つことに。
そうしたら途中で電話がかかってきて、「不備がある」とのこと。
財産目録に【参考】として小規模企業共済のことを書いていたんですが、これがNGと言われました。
というのも、小規模企業共済(の死亡共済金)は相続財産ではないので、遺産分割の対象にもならないし、遺言書で「○○に相続させる」とすることもできないんです。
受け取る人の順位は法律で決まっていて、第1順位は配偶者(事実婚も含む)。
請求を忘れないように、と思って書いておいたんですが、「書くのであれば、手書きの遺言書部分に書いてください」とのことでした。
書き足すいい具合のスペースもなかったし、また全部書き直すのも面倒だったので、これは個別に伝えることにして、この部分だけ省くことに。
(財産目録の該当部分を折ってコピーをし、そのうえで、あらためて署名・押印をしました。)
ほかはOK。
控えはもらえないとのことだったので、写メをとらせてもらいました。
(写メはイヤだという方は、先にコピーをとっておくのがおすすめです。)
最後に「保管証」をもらって、終了です。

死んだ後は?
死亡後は、相続人や受遺者が法務局に「遺言書情報証明書」を請求します。

法務省HP「自筆証書遺言書保管制度」内の相続人等の手続ページ
これで遺言書の内容が確認でき、登記や各種手続きに利用できます。
家庭裁判所の検認も不要です。
なお「指定者通知」という制度があり、亡くなったあとに法務局から「○○さんの遺言書が保管されていますよ」という通知が届くようにしておくことができます。
これで、相続人が遺言書に気づかない、なんてことは防げます。
ただ難点としては、請求のときに、被相続人の出生から死亡までの戸籍や、すべての相続人の戸籍・住民票などの資料が必要になること。
これ、法定相続人に相続させるならそんなに大変じゃないかもしれませんが、わたしみたいに事実婚の相手に遺贈するとなると、資料集めはなかなか大変そう。
その場合は、「遺言書情報証明書」を請求する前に「遺言書保管事実証明書」を請求するといい、と窓口の方にアドバイスいただきました。

「遺言書情報証明書」は遺言書そのもの(内容)が確認できるものですが、「遺言書保管事実証明書」は、内容ではなく遺言書が保管されている事実を証明するもの。
じぶんを相続人・受遺者等または遺言執行者等とする遺言書が保管されていることが証明できるので、それを持って役所に行くと、第三者であっても戸籍などがとりやすいとのことでした。
ただ、よく考えると、その後の登記や各種手続きに戸籍が必要になる場面はあるわけで、難点というほどのことではないのかもしれません。
最後に
自筆証書遺言書保管制度。
「遺言書は残しておきたいけど、公正証書遺言はちょっとハードルが高いな・・・」という方におすすめです。
ただし注意点も。
法務局は形式のチェックはしてくれますが、遺留分が配慮されているかなど、内容についてはみてくれません。
わたしの場合は職業柄その点は心配なかったのでよいのですが、その辺りの知識がなくて不安な方は、公正証書遺言にするなり、専門家に相談するなりしたほうが良いと思います。
とはいえ、若い人でも遺言書を書きやすくしてくれたこの制度、いいことだなと思っています。
特に、わたしと同じように事実婚、子どもがいないといった方は一度検討してみてはいかがでしょうか。
